Principles

L-INSIGHTの基本理念

L-INSIGHTが考える次世代の研究者

科学・学問に対する社会的要請は近年益々高まっており、次世代の研究者は世界を見据え、未来社会を学術で担う役割が求められます。L-INSIGHTでは、このような役割を担う研究者として長く活躍するためには、世界視力を身につけることが肝要であると考えています。

世界視力とは、「価値創造」「内外調整」「社会変革」といった研究活動上の3つの目的に対して、それぞれ 「自分自身」 「小さなグループ」 「大きな社会集団」 の3つの視座を掛け合わせた9つの属性で構成される枠組み(フレームワーク)で整理する行動特性(コンピテンシー)です。

L-INSIGHTではこのフレームワークを、個々の若手研究者が自ら長期的な目標を定め、どのような取組みやコミュニティで研鑽を積めば必要なコンピテンシーが備わるか、自己の現状を見極め、自ら活動改善を図るための基盤としています。

若手研究者の長期目標の実現を支援

目標実現までのプロセスを自ら描く

目標設定のプロセスとモデル化

若手研究者のキャリアは昨今、多様化しています。彼らにとってのロールモデルの不在や、長期的展望の維持を揺るがす現状を踏まえ、L-INSIGHTでは、若手研究者の主体性を活かし、その潜在能力を最大限に引き出す育成プログラムを開発したいと考えています。そのため、京都大学の志の高い若手研究者(L-INSIGHTフェロー)とともにプログラムの実証を行なっています。

L-INSIGHTフェローは研究者としての長期目標と、その実現に向けて取り組むべき活動を想定し、一連のプロジェクトとして実施します。令和6年度からは、研究者のコアサークルを形成することを長期的目標の実現に向けた活動の中心に据え、到達点の一つとしています。

研究者のコアサークル

  • 各研究分野では、最新の研究成果に関するリアルタイムでの情報共有や最重要な国際会議・国際シンポジウム等の企画などを行う世界第一線の研究者グループ、いわゆる「コアサークル」がある。
  • 世界視力を備えた次世代トップ研究者になるためには、自身の研究分野のコアサークルの一員になることを目指さなくてはいけない。
  • それには、現時点から、将来有望な同世代の研究者とのネットワークを形成し、自身の研究分野において研究コミュニティの中心に入り込んでいく素地を作ることが重要。

一連の自己分析ツールとして開発したオンラインツール(Global Insight Individual Logic Plan「GIILP」)を使用して、受講支援メンターやプログラム開発WGメンバーと の対話を通じて、各人に活動に必要なコンピテンシーを言語化します。毎年一回、実行した活動とコンピテンシーとを紐付けし、自己評価と経年的な自己改善に繋げます。

またGIILPは、提供プログラムが各人のコンピテンシーの向上・変化に与えた影響の可視化にも役立っています。拠点ではこの効果測定を通じ、プログラムの改善や、不足しているプログラムを検証しており、事業全体の改善に活用しています。GIILPは個々の研究活動と拠点をつなぎ、L-INSIGHTフェローにとって提供プログラム・資金支援の意義を最大化する役割を担っているといえます。ツールには下記の項目が含まれています。

評価軸 ①-⑨ : 京都大学の若手研究者の研究活動に必要なコンピテンシー

2021〜2025年度の毎年、L-INSIGHTフェローによる定義を評価軸ごとに集約

価値創造× Self
個人の活動
【習慣化・忍耐力】専門性を深め研究を進めるための、基礎作業の習慣化や集中力・忍耐力などの向上
【多角的視点の獲得】多様な人々と協力することで自身の研究を発展させるための、多角的な視点の獲得や俯瞰・具体化の能力
【バランス感覚】研究の社会的価値を高め他者に貢献するための、環境形成やバランス感覚の向上
内外調整× Self
個人の活動
【ビジョンの柔軟性】研究計画をより効果的に進めるための、実行における柔軟性や演繹的な研究ビジョンの導出
【誠実さ・理解力】他者との人間関係を通じて研究を深めるための、誠実さや理解・説明能力
【公平性・倫理観】社会に貢献し後進を育成するために、道標を示したり、他者を鼓舞する指導力や倫理観
社会変革× Self
個人の活動
【継続力・戦略的思考】研究成果を広く発信するための、継続力、戦略的思考や伝える能力の向上
【敢為と行動力】新たなコミュニティを創出するための、信念を持った行動、新たな枠組み創設の敢意の継続
【長期視点・謙虚さ】キャリアマネジメントのための、他己評価や多様な人生観をを受入れる謙虚さ、一生涯を見渡す長期的視点
価値創造× Interpersonal
小集団の活動
【専門家との信頼関係維持】共同研究推進のための、信頼できるエキスパート探索、関係性維持のための環境整備
【後進に対する寛容力】人材育成のために、後進に自身の経験や知識を伝える労力を厭わない姿勢
【自己管理能力】インパクトある研究を実現するための、自己管理能力や価値観を維持する実行力
内外調整× Interpersonal
小集団の活動
【対立に対する打開力】研究チームの円滑な運営のための、潜在的な問題や意見対立に対する打開力
【会話力・人格】ネットワークの拡大を目指しチームと個人の成長を促すための、会話力や実行力や人格
【共有・助言の手法】研究のスピードアップと自律的研究を促すための、手法の共有、適切な助言方法の体得
社会変革× Interpersonal
小集団の活動
【広域なレジリエンス】対外的なプレゼンスの向上のための、外部の研究者との横のつながりの強化
【国際性・公平性ある環境への貢献】研究の社会実装のため、科学的知見の理解促進や、平等で国際的な議論の広がる環境形成
【国際的な相補関係】後進の活躍の場創成のため、研究グループと国際的に相補関係を築く
価値創造× System
大集団の活動
【他者の価値・研究を巻き込む統合力】既存の枠組みを超えた研究を生み出すための、他者の研究をも巻き込む統合力
【人的資源接続を叶える統率力】社会課題に解決を提供し得る独自・特定の同志関係を築き、協力者間の人的資源を接続する統率力
【持続的基盤】他者の資源を接続し、トライアンドエラーが可能な持続的基盤を構築
内外調整× System
大集団の活動
【共創を実現する指導力】短期・長期の目的と戦略を関係者に共有し、研究者・社会人として成長を促す指導力
【対立相手に対するオープンマインド】インパクトを拡大するため、既存のコミュニティ間の接続に加え、競争相手ともコンタクトを図るオープンさと忍耐力
【有識者としての堅固な自意識】新たな価値を発信するため、有識者としての社会的な役割の明確化
社会変革× System
大集団の活動
【学術外交の基盤】欧米中心の国際的論調やテーゼをアジアの学術が主体的に動かすための、科学的概念の提唱や政策提言の行動
【異なるセクター間の橋渡し】日本と海外、企業と大学、異分野間での共通の物差しの獲得とその共有による橋渡し

これらのコンピテンシーは、2020年台の若手研究者が研究活動の推進に必要としたコンピテンシーであり、大学院生等の取り組みにおいても大いに参照し得るマインドセット・スキルセットであると考えています。

プログラム評価 | 9つの属性とプログラムの紐づけ

評価値 = プログラム参加またはその後の研究活動で駆動されたコンピテンシー* / 実人数

*User・Program ID重複は1とカウント

GP抜粋プログラムデータ年度参加フェロー
のべ人数
参加フェロー
実人数
評価値
GIILP評価システム2020〜2024年度88350.310.310.230.170.290.140.310.230.17
名誉教授メンタリングプログラム2020〜2024年度139270.330.300.300.330.330.260.190.150.26
研究費・渡航費・招聘費2022〜2024年度36250.320.320.160.360.400.240.240.160.24
融合研究着想コンテスト2024年度770.000.140.140.140.290.000.140.430.00
京都大学が世界に誇る研究者に学ぶセミナー2022〜2024年度19100.600.200.400.300.500.000.400.100.40
The Kyoto Roundtable for Japan, Australia & India
(日豪印トライラテラル連携プログラム)
2024年度から2022年度開始の
L-INSIGHTキャリアプログラムを包含
15130.080.310.230.230.380.310.080.150.15
国際連携プログラム(豪州)2020〜2022, 2024年度43160.380.380.250.380.380.310.380.440.13
国際連携プログラム(欧州)2021〜2024年度31160.380.440.310.560.440.310.630.500.44
TOTAL(人)350171485039535733473835
コンピテンシー合計/実人数合計0.280.290.230.310.330.190.270.220.20

参加実人数に占めるフェローによる効果判定の割合 [効果チェック数/実人数]

前年度のプログラム参加において「駆動され、引き上げられたコンピテンシー」としてチェックされたプログラムを累計し、プログラム参加実人数で除した値。プログラムへの参加人数がプログラムごとに異なるため割合で示す。同一のフェローが複数回参加をした場合も1 人とカウント(地厚人数)。同一フェローが同じ属性に複数回チェックを入れた場合も1とカウントしています。